11月1日(土)から、東京・シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開中
http://shukuen-chef.com/
台湾から抱腹絶倒な爆笑満腹ムービーがやって来ました。2時間半近い長編なのに、笑い転げているうちにあっという間に過ぎてしまいます。ただ、おいしそうな料理が次から次へと数えきれないほど登場するので、猛烈に食欲が刺激されて、観ながら空腹感を我慢するのが大変です。
ストーリーは単純明快。売れない三流アイドルの女の子が、アイドルを廃業して、実家の料理店を手伝って料理大会に出場するというお話です。
アイドルに憧れて家を飛び出し、街で暮らしていたシャオワン。仕事はチョイ役ばかりでいっこうに売れません。さらに悪いことに男運が悪く、付き合っていた男に大きな借金を押し付けられてしまいます。アイドルに後ろ髪をひかれつつも、八方ふさがりになったシャオワンは、荷物をまとめて実家へ戻ることを決意します。
シャオワンの母親は、父親が亡くなった後、田舎で細々と料理店を営んでいました。しかしこの母親、顔も日本の喜劇女優の藤山直美かニッチェの江上敬子かという感じですが、やることもお調子者で、料理のセンスはゼロ。そのため、母親の店も経営は火の車でした。そこへ台北から追って来た借金取りが現れ、金を返せと迫られて、シャオワンは実家の料理店を手伝い始めます。
じつは、シャオワンには父親から譲り受けた天性の才能があり、料理を作り始めるとメキメキと腕を上げました。シャオワンの父親は、宴席料理を取り仕切る総舗師(ツォンポーサイ)と呼ばれる大役をこなす料理の名人で、神と称されるほどの腕前だったのです。そこでシャオワンは母親とともに全国宴席料理大会に出場し、その優勝賞金で借金を返済しようと考えます。
もちろん、まともに料理の修業をしたこともないアイドル崩れの娘が、プロと戦う料理大会に出場するなんてあり得ないことですが、そこはご愛嬌。
ちなみに、もてなし好きな台湾人は、婚礼や出産、新築などの祝い事があると、屋外に円卓を並べて盛大な宴会「辦桌(バンド)」を催します。辦桌は台湾初期の農村社会からの習慣で、美味しい料理を振る舞って喜びを分かち合うというものです。屋台で料理を作り、歌や踊りも披露して、お祭りのように盛り上がります。また、料理の屋台だけでなく、飴細工などの駄菓子の屋台も出て、大人から子どもまでが楽しめるイベントとなっています。
辦桌では、一般的に全体で10~12品の料理が提供されます。これは台湾人の風習で、偶数が縁起が良いということに起因しています。まず「冷盤」と呼ばれるオードブルを4~5品盛り合わせた皿が出て、次に「手路菜」と呼ばれる軽い単品料理、そしていよいよ総舗師が手掛けたメイン料理「招牌菜」の数々が運ばれます。
そのあとも「後段菜」と呼ばれる料理が数品出されます。これは主にお持ち帰りのために用意されるものです。台湾ではお持ち帰りの習慣があり、辦桌では食べ残しではなく、お客様に持って帰っていただくための料理をわざわざ用意するのです。そしてやっとデザートの「點心」。しかし、そのあとにさらに「收尾菜」と言うシメの料理が出されることもあるとか。これには、終わりよければすべて良し、最後が肝心、という気持ちが込められているそうですが、とにかくそんなこんなでこれでもかと満腹を極める台湾式の美食文化の集大成が辦桌なのです。
ただ、現在は首都の台北では、辦桌が催されることはめったにないそうです。都会では場所の確保が難しくなったこと、あまりにも豪華な宴席になりすぎて莫大な費用がかかること、優れた総舗師が少なくなったことなどが理由だと言われています。この映画には、時代の流れで衰退の一途をたどる宴席料理への郷愁が込められているのでしょう。
最後に。料理作りで行き詰ったシャオワンが、かつて父親とともに伝説的料理人と呼ばれた男に「どうすれば料理で人を幸せにできるの?」と尋ねます。男は「心に喜びをもって作ることが大事だ」と答えます。深い言葉です。
さあ、今日も大切な人が喜ぶ顔を思い浮かべて、楽しい気持ちでお料理しましょう。
なお、『祝宴!シェフ』の公開を記念して、現在下記の台湾料理店にてキャンペーンのサービスが行われています。「祝宴!シェフ」の劇場鑑賞券の半券を持参すると、お食事やスイーツが10%offになったりドリンクやデザートが無料になるなど。詳細は『祝宴!シェフ』のウエブサイト(http://shukuen-chef.com)でご確認ください。
協賛店:新宿「台湾小皿料理 荘園」、新宿「台湾料理 青葉」、新宿「台湾担仔麺 新宿本店」、東銀座「台湾海鮮 東銀座本店」、原宿「マンゴチャチャ」、新大阪「台湾美食空間 一路發」、大阪長堀橋「ホージャー」。
また、『祝宴!シェフ』のウエブサイトでは、抽選で最高1万円のぐるなびギフトカードなどがもらえる「しあわせ料理フォト」も募集中です。
ほかにも、台湾料理研究家・後藤ウィニーさんの「梅菜扣肉(メイ ツァイ コウ ロー)」、俳優・梅沢富美男さんの「台湾風卵焼き」などのレシピも紹介されています。『祝宴!シェフ』の楽しいウエブサイトを、ぜひご覧ください。
監督:チェン・ユーシュン
キャスト:リン・メイシウ、トニー・ヤン、キミ・シアほか
製作:台湾 2013年
上映時間:145分
配給:クロックワークス
(C)2013 1 PRODUCTION FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED.
text/キヌガサマサヨシ(夏休み計画)
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