料理映画:ある戦争 




◆映画:築地ワンダーランド


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<映画紹介>
せっかく日本人に生まれたからには、
知っておきたい奇跡の市場のこと

 

 

『築地ワンダーランド』


このところ移転問題で毎日のようにニュースに登場する築地市場。場外や場内の寿司屋や定食屋には行ったことがあっても、実際の市場の中のことは知らないという人がほとんどではないでしょうか。




僕自身も、以前、知り合いの外国人に「ジャーナリストを連れて日本に行くから築地市場を案内して」と言われたことがあったのですが、結局、英語の市場ツアーを紹介してお茶を濁すという情けない経験をしました。場内でも飲食店街以外には入ったことがなかったし、市場の仕組みや成り立ちについての知識もまったくなかったので・・・。


料理好きなみなさんも、海外から遊びに来た友人に「築地に連れてって」と言われることがあるかと思いますが、そんなときのためにおすすめしたいのが、この『築地ワンダーランド』。築地市場がいかに特別な場所であるかということが理解できるドキュメンタリーです。

築地市場で魚を扱う水産物部には、卸売と仲卸の2つの業種があります。卸売は産地から運ばれてくる海産物を引き受けて、セリなどを行う業者。仲卸は卸売から海産物を買って、町場の魚屋や飲食店に魚介を卸す業者です。仲卸は市場内に約600軒もあって、それぞれがマグロ専門、えび専門、貝専門、寿司だね専門と、得意分野に特化した商いをしています。それだけに、自分が扱う商品については、時期によって異なる魚の状態や、その状態に合わせた美味しさの引き出し方などをとことん知り尽くしています。



また、料理人の多くは、決まった仲卸から魚を仕入れるのが一般的。そのため、仲卸業者はどの料理人がどんな状態のどんな魚介を好むかというこだわりまで熟知していて、それに合わせて商品を仕入れます。ただいい魚を競り落として並べるだけでなく、買い手のことまで考えて魚を選ぶ。そうした精緻な知識の蓄積こそが、築地が世界でも類まれなる特別な市場と言われる所以なのでしょう。



映画ではこうした市場に関わる人々の150人以上にインタビューを行い、撮影には1年4カ月を費やして、築地市場の何たるかを探ります。敷地の広さや、商いを行っている業者の数、流通する魚介の量などの物理的な規模の大きさだけではなく、海外の一流の料理人からも築地市場がリスペクトされるという理由が、次第に見えてきます。“築地”とは、市場という場所を指し示すものではなく、奇跡的とも言える魚介にまつわる英知の有機的な集合体なのです。



現在のこのタイミングでこの作品が公開されることに、何かしらの天啓的な意味があるかはわかりませんが、食に興味がある人には、ぜひ観ていただきたい映画です。ナレーションは英語で、日本人の関係者のインタビューには英文字幕もつくので、外国の方にもお楽しみいただけます。海外から来ている友人と観に行くのもおすすめです。



監督:遠藤尚太郎
取材協力:築地で働く人々、すきやばし次郎/小野次郎氏、すし匠/中澤圭二氏、鮨さいとう/齋藤孝司氏、銀座 ろくさん亭/道場六三郎氏、noma/レネ・レゼピ氏、ハーバード大学/テオルド・ベスター氏、料理評論家/山本益博氏ほか
製作:2016年 日本 110分
配給:松竹メディア事業部
©2016松竹

text/キヌガサマサヨシ(夏休み計画) 



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