2014年5月1日(木)から、
TOHO シネマズシャンテ ほかで全国順次公開
http://www.torawarete.jp/index.html
アデルはある日、息子を連れて町のスーパーマーケットへ買い物に。そこで脱獄囚の男、フランク(ジョシュ・ブローリン)と出会って脅され、自宅にかくまうことになります。フランクはキッチンに立ってチリコンカルネを作ると、イスに縛り付けたアデルにも食べさせます。手が使えないアデルのために、スプーンを口元まで運ぶ仕草は、まるで親が小さな子どもにするようでした。
脱走の際のケガが癒えるまでいさせてくれと頼み、その代わりにと車や家の修理をするフランク。ニュースで殺人犯だと言われている男は、意外にも紳士的で、時間が経つにつれてアデルも息子も彼に対する恐怖心が薄れます。殺す気はなかったと妻殺しの事件の真相を語るフランク。夫を失った喪失感から情緒不安定になっていたアデルは、次第にフランクの人間的な魅力に惹かれていきます。父を失った淋しさを抱えていたアデルの息子もまた、野球の相手をしてくれるフランクに父親像を重ねていきます。
しかし、小さな田舎町では人をかくまうことは容易ではありませんでした。パトカーに家を包囲されると、フランクはアデルたちが逃亡をほう助した罪に問われることがないよう、人質らしく見せるためにふたりを縛り上げ、自ら投降して警察に逮捕されます。つらい過去の記憶にとらわれて立ち止まっていた母子と、悲しい事件の罪を償うために再びとらわれ人となる脱獄囚の男との、つかの間の心のふれあい・・・。
この映画の中で大きなポイントとなっているのが、ピーチパイを作るシーンです。山盛りの桃を前に慣れた手つきでパイを作り始めるフランク。アデルと息子も手伝いますが、甘い香りに包まれながら仲の良い家族のように楽しく作業するうちに、アデルの心にフランクに対する愛が芽生えるのでした。
料理は食べるときだけでなく、作るときにも人の心を結びつける力があるのです。小さい時にお母さんの手伝いをした日のことって、いい思い出だったりしますよね。美味しく作って大切な人に喜んでもらいたいという気持ちが、お互いの心を開かせてくれます。『とらわれて夏』を観ると、愛する人と一緒に料理を作りたくなります。恋人と、夫や妻と、子どもと、一緒に料理を作ればきっともっと親密になれるはずです。たとえ上手に出来なくても「何やってんのよ。ヘタクソ」などと責めずに、優しい気持ちで。大切なのは一緒に作る時間を楽しむことです。ぜひお試しを。
そして、このピーチパイには後日談があるのですが…。それは映画を観てのお楽しみ。
※映画『とらわれて夏』のレビュー記事に、「ピーチパイ」の情報が追加されました。
<追記>
残念ながら映画の中では、ピーチパイのレシピにはふれられていませんが、アメリカの
ピーチパイについて紹介しておきましょう。
アメリカでは桃といえば桜桃が一般的。白桃もありますが、どちらも日本の桃より硬く
、甘みも控えめです。
なので、パイに使用するには甘さを増すために桃に砂糖をまぶします。映画でも桃に砂糖をまぶすシーンが
セクシーに描かれていて印象的です。
ご家庭で作る際は、缶詰の黄桃かネクタリンを使うと、アメリカンピーチパイに近い仕上がりになるでしょう。
ちなみに、アメリカではピーチパイを作る際に、シナモンのほかにカルダモンを加える
ことが多いようです。
上品な香りの日本の白桃には強すぎるかもしれないですが、缶詰の黄桃やネクタリンに
は合いそうです。
ぜひお試しを。
(C) MMXIV Paramount Pictures Corporation and Frank's Pie Company LLC. All Rights Reserved.
監督:ジェイソン・ライトマン(『JUNO ジュノ』『マイレージ、マイライフ』)
出演:ケイト・ウィンスレット(『タイタニック』『愛を読むひと』)、ジョシュ・ブローリン(『ノーカントリー』『L.A. ギャング ストーリー』)
制作: 2013年 アメリカ
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
上映時間:111分
text/キヌガサマサヨシ(夏休み計画)
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