皆さんこんにちは。横浜でフリーのライターをしているナカキタと申します。
去年の10月、ふとしたご縁でここNiki's Kitchenを知り、以来気に入った講習を見つけては根岸に通うようになりました。
 フェンスで囲まれた、国際都市ヨコハマの中のもうひとつの国。それまで私は横浜にいながら、こんなエリアがあることなど、ほとんど意識しないで暮らしていました。
でもいったんゲートを通り抜け、向こう側を覗いてみれば..。ちょっと特殊な環境ではあるけれど、そこにはやっぱり普通の人々の生活がありました。
「Hi!」と言えば「Hi!」と答えてくれる屈託のない笑顔にも出会いました。
そして何より、多様なバックボーンを持つ人々が集まるアメリカらしく、いろんな文化をかいまみることができました。
 鶴見に住む私にとって、根岸は京浜東北線一本、210円で行ける、いちばん近いアメリカです(もちろん講習代4500円は別途、ですけど)。
この小さなアメリカで、料理を習い、おしゃべりをし、時には広い敷地の一角を歩いたりして体験したことを、これから少しずつ紹介していきたいと思います。
どうぞおつきあいくださいね。



第一回 根岸でシナボン その1


 シナボン=シナモンロール。なんであんなに流行っているんだろう。
いくつかのデパートやドーナッツショップ、ベーカリーなんかに、ある時期いっ
せいに現れて、あっという間に人気者になったって感じ。
 甘いパン生地に、たっぷりのシナモンとブラウンシュガーを乗せてロールする。
トッピングには、これまた甘いチーズとマーガリンのシロップをこってりと。
甘きをもって甘きを制す(?)、まさにアメリカン・スィーツの王道だ。
 正直、ナカキタはコテコテに甘いアメリカのお菓子は苦手。はっきり言って、
わりとお気に召さないかもしれない(・・・全然はっきり言ってないぞ、おい) 。
でもシナボンだけは別格なのだ。ある朝目ざめると、無性に食べたかったりする 。


 ずいぶん昔だけど、ナカキタは半年ばかりアメリカで過ごしたことがあった。
で、その頃毎朝これを食べていたのだ。いや、別に好きだったわけではなくて、
たまたま最初にカフェで注文して通じたから、なんだけどね。
 他のものをオーダーして「?」なんて顔されると恐いじゃない。だからその店
で一週間ほどずっと注文し続けたら、何も言わないでもシナボンが出るようにな
っちゃった。やだなー、絵に描いたようなニッポン人的エピソードだ〜。
でもアメリカで経験したさまざまなカルチャーショックとともに、あのシナモ
ンの強烈な香りは、味覚と嗅覚の奥深くにしっかり刻み込まれてしまったみたい。
(アメリカのヨタ話はまた別の機会に・・・)


 だからNIKIのメルマガでこのシナボン教室の案内を見たとき、反射的にサンフ
ランシスコのカフェを思い、
「ヨコハマのアメリカで本場シナボンかぁ、うん、いいじゃん」ってなわけで、
さっそく申し込むことにしたんだ。
 ナカキタにとってはこれが最初の講習だー。


 1人で行くのが心細かったので、息子の公園友達のママを誘うことにした。
1人に声をかけたら、私も私もと希望者が集まり、結局参加者は5人。それぞれ1人
ずつ、4歳の子どもを連れての参加となった(このお子さま軍団があとで大変な事
件を起こすんだけど、それもまた別の機会に・・・)。
「毎年ハワイへ行くたびに食べてるんだけど、日本で買うシナボンってなんかち
ょっと違うのね。本場のレシピを教えてもらえるならぜひ行きたいわ!」という、
いまいましい理由で参加した者が、うち2名。
 最近のシナボン人気は、こんなふうにハワイのリピーターがかなり貢献してい
る、とみた。


約束は某日夕方5時30分。
車二台に分乗していよいよ根岸の米海軍住宅に乗り込む。待ち合わせで渋滞に巻
き込まれ、ゲートで手間取り、まあいろいろあったけどそのあたりはパスね。
 とにかくリンダの家に無事到着。ご主人のアレックス、一人息子で1歳のキガン
も 出迎えてくれた。いよいよ講習スタートなのだ。
 リンダはメルマガで紹介のあったとおり、大柄でブロンドの温厚そうな女性。
もとは空軍で働いていたという21歳。
 え、え〜っ?21歳? ほとんどコギャルの世代じゃん。それなのに全然キャピ
キャピなんかしてない。テキパキと、しかも穏やかに講習を進める様子は大人の
女性そのものだ。
 それにひきかえ、彼女よりかなりお姉さんの生徒5人ときたら。初めて足を踏み
入れたアメリカ式のキッチンにまず大興奮。きゃー、広いわぁ! あら〜、皿洗
い機、それにディスポーザーも! 見て見て、この大きなガスオーブン! いやー
ん、シンクも調理台も広々〜!・・・ちょっとあんたらうるさすぎ。あ、私もか 。
 中でも今住み替えを考えているN子ママのチェックの目は間取りにまでむかう。
「キッチンの次の間に洗濯室って便利だよねー。それに天井が高いから収納も
たっぷり・・・」。最後には「ここに住むことはできないのかなあ」だって。
うーん。可能性としては、ママが基地の人と再婚するか、ご主人が米海軍に入隊
するか・・・。
 そこへリンダが「これでも私にとっては狭くて不満が多いのよ」なんて、火に
油を注ぐものだから、主婦5人組はさらに騒然。日本を代表して、自分ちの台所が
いかに狭いか不便か、涙ながらに訴えておいた。すいません、勝手に代表して。


 さて、そうこうしている間に、リンダはあらかじめ発酵させてあった生地を5人
の前に置き、これをローラーで薄く引き伸ばすようにと言った。すっかり前置き
が長くなっちゃったけど、ここからが私たちの作業だ。


 というところで、「根岸でシナボン」その2に続きます〜。チェキラッ!

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エッセイストの紹介
中北久美子 ナカキタクミコ
(プロフィール)
中北久美子 

ナカキタクミコ 名古屋の情報雑誌月刊「KELLY」編集から編集 デスクを経てフリーに。以後、雑誌・広告・社内報・官公庁の出版物・ゴース ト・ ラジオの構成などで企画・取材・執筆を担当。結婚後、神戸、金沢、富山と拠 点を 移しながらその土地の取材物を中心にライターを継続。今後は、女性のライフ スタ イルに関する記事を書いていきたいと考えている。 現在、横浜在住。好きなものは温泉、お散歩、お茶、古い建物、犬、60年代 のR &B、70年代のブリティッシュロック、80年代のスィートレゲエ、「館」のつ く場 所(水族館・博物館etc・・・)、浮世絵、特撮ヒーロー、伝奇小説、南の海、そ して一 人息子とのおしゃべり、などなど。

「よみたい!ネット」に「横浜お散歩マニア」連載中 http://www.yomitai.net/